県営水道でたいへんなことが起きている!
箱根町に調査に行ってきました。なんと、箱根の県営の水道施設を県はまるごと民間委託に出すというのです。全国初。これがあっさり許されてしまえば、世界中で問題になっている「水ビジネス」が本格化する、たいへんな問題だと、佐野議員といっしょに、箱根にお住まいの、元県企業庁職員の方に詳しい話を聞きに行ったのです。
日本の水道は、水道法で原則として「市町村が運営する」と決められています。それは、水は生きていく上で絶対に欠かせないもの。それを利潤のために高い値段にしたり、勝手に売り物にしてはいけないという理由からです。なので、町中に水道を張り巡らし、一瞬たりとも事故を起こさずにどこにも水を配る高度な技術は、自治体しか持っていません。日本の民間会社が海外で水道事業を展開し、もうけを上げたいと考えると、自治体から技術やノウハウを教わる必要があります。その勉強の場がほしいと、国が音頭を取ってそういう事業体を募集しました。多くの自治体はことわりましたが、2年前、神奈川県知事が手をあげ、手ごろな規模のこの箱根地区を差し出したのです。
箱根町は町営水道もあって、県営の水道は箱根町の北半分、強羅や大涌谷など、標高の高い地域をカバーしています。水源はすべて地下水。主に3つの水源から高い山にポンプで持ち上げて、給水しています。利用者の7割は温泉旅館。地下水で水がきれいなのでろ過装置がほとんどいらない。水道管のほとんどが山のなかという、かなり特殊な水道事業です。これを、JFEを中心とする民間会社に、水源から蛇口まですべて運営させる。県は財産の所有と水道料金の決定しかやらないというのです。目的は明確で、5年間でこの民間会社が海外でビジネスを展開できるようにノウハウを教えるということを、はっきりとかかげています。
これは本当に危険です。水道を維持する技術というのはとても特殊で、一度途切れてしまったら取り返しがつきません。どの自治体も綿々と技術を練り上げ、受け継いできているのです。この民間会社はある程度技術を身につけたらさっさと海外ビジネスに行ってしまって、箱根は放り出されるでしょう。そこに「水道事業は命を守る」という姿勢はありえません。いまは川崎からは遠いところの問題かもしれませんが、国際的な水ビジネスに協力するという方針は川崎市も持っており、いつ、この仲間入りをするか知れたものではありません。ただでさえ、生田浄水場の廃止で、川崎も職員を減らし技術の継承が心配されています。箱根をまずやめさせなければならないと思います。
箱根町の小川さんに、どんなところにどう水を配っているのか、箱根駅伝のルートをどんどん上って見せていただきました。標高差600メートルの地域で、山のなかに水道管を巡らせ、県の水道職員の皆さんがどんなに苦労して水を配っているかよくわかりました。これをわずか半年の引継ぎですますなんて、箱根の水はどうなってしまうのか、と本当に心配になりました。
それにしても、神奈川県議会には共産党の議席がありません。こんな重大な問題も議会ではいっさい議論されないのです。県会議員がほしいと切実に思う瞬間です。