尖閣諸島問題で、共産党の立場を述べました
9月議会最終日。自・公・民・みんなの4党から「香港民間団体による領海への侵入及び尖閣諸島への不法上陸に関する意見書」案が提出されました。結果的にはその4党の賛成で可決し、国に対し川崎市議会の意見書として提出されるのですが、私たちは理由を述べて反対しました。その反対討論を私が行いました。短くしてしまうと思いが伝わらないので、全文載せます。日本が尖閣諸島の領有権を主張するのは正当であること、「領土問題は存在しない」という立場が問題であることなど、議場でしゃべっていても、「そうだよなあ」と思ってしまう内容を、ぜひご覧ください。
私はただいま議題となりました、「意見書案第24号 香港民間団体による領海への侵入及び尖閣諸島への不法上陸に関する意見書」案に対し、反対討論を行います。
この問題では、物理的対応の強化や、軍事的対応論は、両国・両国民にとって何の利益もなく、理性的な解決の道を閉ざす、危険な道であり、日中双方ともに、きびしく自制することが必要です。
わが党は、尖閣諸島について、日本の領有は歴史的にも国際法上も正当であるという見解を表明しています。
第一に、日本は、1895年1月に、尖閣諸島の領有を宣言しましたが、これは、「無主の地」の「先占(せんせん)」という、国際法上まったく正当な行為です。
第二に中国側は、尖閣諸島の領有権を主張していますが、中国は1895年から1970年までの75年間、一度も日本の領有に対して異議も抗議もおこなっていません。中国は、同諸島は台湾に付属する島嶼(とうしょ)であり中国固有の領土であるのに、日清戦争に乗じて日本が不当に奪ったと主張していますが、先に述べたとおり、日本による尖閣諸島の領有は、日清戦争による台湾・澎湖(ほうこ)列島の割譲という侵略主義、領土拡張主義とは性格がまったく異なる、正当な行為です。
尖閣諸島問題を解決するためには、日本政府が、この尖閣諸島の領有の歴史上、国際法上の正当性について、国際社会および中国政府に対して、理をつくして主張することが必要です。
この点で、歴代の日本政府は、「領土問題は存在しない」という立場を繰り返すだけで、中国との外交交渉によって、尖閣諸島の領有の正当性を理を尽くして主張する努力を、避け続けてきたことが大きな問題です。
歴史的にみると、日本政府の立場には二つの問題点があります。第一は、1972年の日中国交正常化、1978年の日中平和友好条約締結のさいに、尖閣諸島の領有問題を、いわゆる「棚上げ」にするという立場をとったことです。1972年の日中国交正常化交渉では、当時の田中角栄首相と周恩来首相との会談で、田中首相が、「尖閣諸島についてどう思うか」と持ち出し、周首相が「いまこれを話すのは良くない」と答え、双方でこの問題を「棚上げ」するという事実上の合意がかわされることになりました。1978年の日中平和友好条約締結のさいには、当時の園田直(すなお)外務大臣と鄧小平副首相との会談で、鄧副首相が「放っておこう」とのべたのにたいし、園田外相が「もうそれ以上いわないでください」と応じ、ここでも双方でこの問題を「棚上げ」にするという暗黙の了解がかわされています。
本来ならば、国交正常化、平和条約締結というさいに、日本政府は、尖閣諸島の領有の正当性について、理を尽くして説く外交交渉をおこなうべきでした。同時に、尖閣諸島の問題を「棚上げ」にしたということは、領土に関する紛争問題が存在することを、中国との外交交渉のなかで、認めたものにほかなりません。
第二に、認めたにもかかわらず、その後、日本政府は、尖閣諸島をめぐって解決しなければならない領有権の問題はそもそも存在しないとの態度をとり続けてきたことが、さらに問題を引き起こしています。
「領土問題は存在しない」といってしまうと、日本の主張を述べることができないという自縄自縛(じじょうじばく)に陥ってしまいます。中国政府は、「釣魚島(ちょうぎょとう)は、日清戦争末期に、日本が不法に盗みとった」、「日本の立場は、戦後の国際秩序に対する重大な挑戦である」など「日本軍国主義による侵略」だとする見解を繰り返していますが、日本政府は、これに対する反論を一度もおこなっていません。反論をおこなうと、「領土問題の存在を認める」ということになるとして、ここでも自縄自縛に陥っているのです。この間の日中両国の緊張激化の原因の一つに、この「領土問題が存在しない」として、外交交渉の努力をしないことがあることは明らかです。
日中両国間に、尖閣諸島に関する紛争問題が存在することは、否定できない事実です。日本政府が「領土問題は存在しない」という立場をあらため、領土に関わる紛争問題が存在することを正面から認め、冷静で理性的な外交交渉によって、日本の領有の正当性を堂々と主張し、解決をはかるという立場に立つべきです。
この間の日本への批判を暴力で表す行動は、いかなる理由であれ許されません。中国は道理にもとづき、冷静な態度で解決をはかるという態度を守るべきです。わが党は中国政府に対して、直接、中国国民に自制をうながす対応をとること、在中国邦人、日本企業、日本大使館の安全確保のために万全の措置をとることを求めてきました。
以上の立場からかんがみるに、本意見書案では、領土問題は存在しないという認識のもと、尖閣諸島及びその海域の警備体制の強化を求めています。それではいっそう緊張を高めることになり、真の解決にならないという立場から、反対することを表明し討論といたします。