神奈川の水源と治水を知るツアーです
三連休の中日はいちにち小田原方面でした。神奈川自治体問題研究所が開催した「かながわの治水と水源の現状を知る」という企画です。神奈川県民は、地下水をくみ上げているいくつかの自治体を除くほとんどが県の西側の川をせき止めたダムの水に頼っています。たくさんの問題を持っているのですが、なかなか知らない人が多いので、入門講座をやろうということです。大型バス1台で、小田原市の酒匂川にある飯泉取水堰とその上流にある三保ダムを見学しました。そして、江戸時代の酒匂川の治水の歴史も学ぶことができ、とても充実した一日でした。
飯泉取水堰は、川崎市がわざわざ市内の地下水をやめて買い続けている水の水源です。酒匂川の河口から2キロ。莫大な電力を使って標高の高い、56キロも離れた川崎の宮前区まで運んでいます。昨日からの雨で水量が多く濁っていましたが、ここはいつ来ても濁っていて処理費用も莫大です。これまで何度も見学に来ていますが、今回新たに分かったのは、ここ1年ほど電力の使用を抑えるためにここからの取水量を抑え、相模大堰からの水をより多く配分しているということでした。やっぱりこんなに遠くて高くてまずい水をいつまでも配り続けることに無理があると思います。
三保ダムは、もう紅葉が始まっていました。飯泉取水堰にコンスタントに水を送るために作られたダムです。約40年前に完成し、耐用年数には達していないのですが、上流のがけ崩れが深刻で底に堆積物がたまり、もういっぱいになりそうなのです。ダムに頼っていると、次はどうするのか問題になります。すくなくとも川崎市は地下水を復活させればこの水はいりません。水の需要が本当に減った今、ムダなダムはいらないという選択も必要だと思います。
この酒匂川、富士山の宝永大噴火や江戸時代の大きな地震により、せっかく作った堤防が決壊し、何度も水害に見舞われます。足柄平野と呼ばれる豊かな耕作地を守るために、川崎の二ヶ領用水を作った田中丘隅も尽力し、住民が力を合わせて治水を行った歴史を記す貴重な遺跡を、歴史研究家の大脇良夫先生が詳しく説明してくれました。中国の治水の神様「禹王」をまつり、その祭礼を今も綿々と受け継いでいる地域はここだけだそうです。大脇先生は「三保ダムを作ったことで“根拠なき安心感”をうえつけていないか」と危惧します。どんな天災によりどんなことが起こったのか、しっかりとうけつぐことが防災の第一歩であることはこの数年間、思い知らされたことでした。まだまだ勉強することがあると実感した一日でした。