井口まみ
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第53回稲田つつみ寄席が開催されました

「東京に行かなくても地元で寄席に」と1975年にはじまった「稲田つつみ寄席」。53回になりました。今回も抱腹絶倒、ホントに面白かった。

寄席1 前座の瀧川鯉ちゃさんは「寄合酒」です。つつみ寄席にははじめてきていただきました。前座さんの落語って、私みたいな素人でも「ああ、始めたばかりなんだなあ」と思う人が多いのですが、鯉ちゃさんは、落ち着いていて、話が滑らかでうまいのです。なんだか前座さんという感じがしない。あとで聞いて納得しました。40歳目前、落語が好きで好きで、ずっとアマチュアでやってきたのだけれど、どうしてもプロになりたくて、超有名な大企業の課長になる目前で辞表を出して、入門したのだそうな。みんなで「もったいない!」。でも本人はとても楽しそうです。

寄席2 二つ目の柳家小蝠(こふく)さんは、「鈴ケ森」。盗人が鈴ケ森の暗闇が怖くて、追いはぎができないというなんとも間抜けなお話し。小蝠さんが枕で言っていましたが、落語のチラシには演目が書いてありません。落語家さんは会場に来て、これまでにやった演目の一覧…「根多帳」を見て前とかぶらないようにしながら、お客さんの顔を見て、その場で演目を決めるのだそうです。女性が多いとか、お年寄りが多いとか、その場の雰囲気でぱっと決める。それだけ、自分の中にネタがないと、そんなことはできません。いっぱいいっぱい稽古するんでしょうねえ。はたから見るほど楽じゃないと思います。

寄席3 曲独楽はやなぎ南玉さんです。まわる独楽が、日本刀の上をするすると動いていくなんて、どのくらい練習すればできるようになるのだろう。いつも思うのですが、1つの芸を極めるのはたいへんなんですよね、きっと。日本に残るこういう芸能がこれからも続いていくことをホントに祈っています。

寄席4 トリは真打、三遊亭遊喜さんの「不動坊」です。昨年真打になったばかりの新進気鋭の落語家さん。前座のときからつつみ寄席にきていて、これで4回目。真打になってはじめての出演だと本人が言ったら、会場から拍手がおきました。つつみ寄席の楽しみは、これなんです。前座だった人が、二つ目になり、真打になってまたやってくる。どんどんうまくなっていくのを見て、まるで私たちがうまくしてあげたような気分になって、うれしいのです。不動坊というネタもおもしろかった。場面がどんどん変わっていろんなシーンが出てきます。大家さんの家だったり、お風呂の湯船だったり、長屋の連中が集まっているところだったり、屋根の上だったり。目の前には一人の落語家しかいないのに、テレビのそういうシーンを見ているような気分になるのはどうしてなんでしょう。落語って本当にすごいと思うのはこういうときです。

しかしスポンサーも付かずに寄席を維持しているのは、じつはかなりたいへんです。会員さん大募集!年間6000円で、年2回の公演にそれぞれお二人ご招待。かなり割安です。あなたもぜひ!