「遺体 明日への十日間」を観ました
映画を見るのは何年かぶり。少し待っていればすぐにDVDになると思うのですが、これはやっぱりちゃんと劇場で見ようと有楽町まででかけました。はじめっから泣きっぱなし。暗いところでひとりでよかった。
震災の時、釜石市の遺体安置所であったことをルポにした原作を、現地の人たちにも丁寧に取材して映像にしたとのこと。主演の西田敏行さんをはじめ、いろんな思いを持ちながら映画にしていったことが様々なメディアでも語られています。被災地を忘れてはならない、その思いを表すために大きな役割を果たす作品だと思いました。
あの瞬間に立っていたところがほんの数メートルの違いで生死を分け、肉親があっという間に命を奪われてしまう、その理不尽さを受け入れられない家族の思いが胸に迫ったのはもちろんです。自分も被災者でありながら毎日毎日たくさんの遺体をまのあたりにしなければならない職員の苦しさも、おもくのしかかりました。
しかしつい、職業の目で見てしまいます。遺体安置所では何をしなければならないか。どういう問題が起こるのか。そこにいるものはどういう心構えが必要なのか。
それまで「死」とは全く関係のなかった課にいた職員が、地震の混乱の中で上司からいきなり「お前は遺体安置所に行け」と言われて、廃校の体育館に行って、その場にただ茫然と立ちすくむ姿が、わが身に重なります。最後の一人を見送るまでに何をしなければならないのか、手さぐりで行っていた十日間はあまりにも長かった。
これだけ、大規模地震が来るといわれているのです。巨大な被害を目の前に呆然と立ちすくむことを繰り返してはならない、と強く思います。なによりも、遺体安置所を作らなくてもすむ備えを。あの涙を繰り返してはならない。そのために今できることをしなければならない、と思った二時間でした。