エネルギーの地産地消へ、福島の努力
原発事故のあと、福島県は2040年までに県内のエネルギーは100%、再生可能エネルギーで自給すると決めました。それに呼応して、自治体も市民団体も様々な工夫、取り組みが旺盛に行われています。そのいくつかを視察させていただきました。首都圏の大都市の川崎ですぐに活用できるわけでもないのですが、根本的な理念は本当に、なるほど!と思うものでした。
喜多方市では、一般社団法人「会津自然エネルギー機構」と株式会社「会津電力」の方から詳しいお話をうかがいました。「自分の家の電気はどこからきているのかなんて、全く気にもしなかった」のが、原発事故で何とかしなければならない、と思い、地産地消はできないのか、と運動を始める。そのなかで、実際に電気を作ろうと考え、老舗の酒蔵の社長さんを中心に資本金300万円で会社を立ち上げ、20キロワット未満の小水力発電、50キロワット未満の太陽光発電をあちこちに作る支援を始めるのです。
「大和川酒造」という江戸時代から続く老舗が拠点です。酒蔵の屋根に太陽光パネルが設置され、1時間当たり16キロワット発電しています。これで年間4世帯分の発電量。なんとこの日に限って雪が降り、パネルは雪の下でした。行政からも様々な支援を得て、学習会も積み重ねる中で少しずつ取り組みが広がっていっているとのことでした。
柳津町という、人口3800人の小さな町には、東北電力の地熱発電所があります。この取り組みを聞きに、まず町役場に行くと、町長さんが歓迎のあいさつをされ、議長さんがレクチャーに参加してくれました。最大出力64500キロワットという日本最大の発電施設を作るにあたって、地元の住民とどういう話し合いをしたのか、行政はどういう支援をしているのか。地下2000メートルから蒸気をくみ上げるわけですから、予測のつかないことがあって、予定通り発電できず、苦労されています。議長さんは、地熱だけでなく、エネルギーと食料で自給率100%の街をつくり、そこに雇用を作り出して、街を活性化したいのだと力説されていました。
喜多方も柳津も、過疎がすすみ、外から企業を呼び込むようなことはもう考えられないといいます。「エネルギーも食料も自給できるのに、なぜ人が出て行ってしまうのか。おかしいではないか」。どちらでも言われました。この町で豊かに安定的に暮らせるようにするために、明確にエネルギー自給率100%をめざす。そのために何が必要か真剣に考える。このスタンスがまずあるかどうか。これが取り組みを分ける。このことを一番学びました。
水道と一緒です。私たちはどこで電気が作られてどこから運ばれてくるのか、考えてもいませんでした。もう、原発に頼らない。エネルギーも地産地消することを前提に、いったいどれだけのエネルギーが必要なのか、どこからとれるのか、それをしっかり計画を立てて推進することが必要です。それなしにいくらかっこつけて「環境問題に取り組んでいます」などといっても、本気ではないのだと、2つの都市の人たちを見てつくづく思いました。