井口まみ
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「川崎市はお金がない」はまったくのごまかしだった

SONY DSC9月議会は、昨年度の決算を審議しています。議員は分科会に分かれて局ごとの決算について審査したあと、会派ごとの総括質疑を本会議場で行います。今年は共産党を代表して私が総括質疑に立ちました。

私の前には自民党、公明党、民主党が行いましたが、口をそろえて「財政が厳しいなかで、どうするか」という議論をしました。しかしそれは、なぜ厳しいのかということを正確に論証しないままで、とにかく厳しいことが前提、という議論でした。私の総括質疑はこれに真っ向から反論するものでした。

私たちは、ここ数年、「川崎は本当に財政が厳しいのか」ということを研究してきました。その積み上げの上にたって、今回「実は財政は厳しくない」ということを明らかにしようと取り組みました。この部分の原稿を担当した人たちがそれはそれは苦労して、自治体財政の仕組みをひもとき、分析したのです。私もその原稿を自分の言葉で語るために、くりかえし読み返して理解しました。

あとで動画もアップしますし、川崎市議会のホームページからも見ることができますが、わずか数分の中で、しかもかなり急いでしゃべっているので、議場の画像だけで理解するのはたいへんかもしれませんが、要するに、市長があらゆるところで繰り返し言う「財政が厳しい」ということに何の論拠もなかったことがわかったのです。

2014年8月に発表した「財政収支の中長期推計」では2015年度以降毎年200億円もの収支不足が生じ、10年間で最小で1633億円、最大で3941億円の不足が生じるといっていました。ところが1年後の2015年7月の「新総合計画素案」では、2016年度124億円、2017年度187億円、2018年度28億円が不足となるが2019年度からは収支不足は解消される、と予測し、一気に減りました。実際、2015年度、今年度の収支不足の予測だけみても、2014年2月には44億円、2014年8月には194億円、そして2015年3月には54億円と、わずか1年の間に大きく変動しています。ここからわかるのは、そもそも収支不足額の試算根拠自体がまったくあいまいだということです。

現実の川崎市の実態は、2014年度は市税収入が前年度よりも40億円以上増え、過去最高額になっています。転入者が増え、人口がどんどん増えていること、住宅の新築などによる固定資産税も増えているからです。こういうとすぐに「扶助費(社会保障費など)が増えているから、やっぱりきびしい」といいますが、扶助費の多くは国からの給付金が入るため、全額市の負担ではありません。だいたい自治体は「福祉の増進」が使命であり、福祉が必要な市民が増えたら、何よりもまずそこに手当てをするのが当たり前であり、本当に社会保障にお金が必要ならそれに使うべきなのです。なのに、ろくな根拠も示さないまま、「何百億円も収支不足が発生する」と市民に宣伝するのは、結局「福祉を我慢しろ」という脅しに使われているのではないか、とさえ思われるのです。

もうひとつ、財政が厳しいことの論拠になっているのが、「減債基金から借り入れをしないといけないような財政だ」ということです。減債基金というのは、その名のとおり、市の借金を返すための貯金みたいなもので、市債の返還以外に使う場合には、「基金からの借入金」として表現されます。市がいろいろお金を使う中で、足りなくなったときに、市債を発行する、つまり借金をするか、自分のところの貯金を使うかという方法になり、いずれにしてもあまり推奨されることではないとされています。実際2015年度、減債基金から13億円を借入する予算であることから、「財政が厳しい」という根拠にされています。しかし、ここにもからくりがあります。減債基金はなんと、毎年増え続けているのです。一方で借入をしながらもう一方で積み立てをしている。どういうことでしょう。私たちは「ことさら"財政が厳しい"ことを強調するための作られた借入ではなかったのか」と指摘しました。百歩譲って毎年の収支不足の予測を信じるとしても、あと3年間で収支不足は解消するというのですから、それまでは減債基金から借り入れて3年後に返すか、減債基金を積み立てしないでその分を市政運営に使えば、収支は不足しない。これが川崎市の財政の姿なのです。

さらに、こどもたちの医療費の無料化や特養ホームの建設、道路や公園の維持補修などやってほしいことがたくさんあります。これも総括質疑で要求しました。これらを行う予算は、540億円もするような無駄な橋や、わけのわからない大規模開発をやめればすぐにできます。結局、市長先頭に「財政が厳しい」「川崎にはお金がない」といいつのるのは、こうした無駄な大規模事業を市民の目から隠し、あきらめさせるための攻撃に他ならないということをあきらかにした質疑でした。