第64回稲田つつみ寄席、にぎやかに開催
「東京まで行かなくても大好きな寄席を地元で」と1985年から開催している稲田つつみ寄席。64回目を迎えました。今回はいろんな行事が重なり、常連さんが少なかったのですが、初めてお越しになる方がとても多くて、いつもと同じくらいのにぎやかな会に。どうやら講談の神田松之丞さんの日程をネットで見てこられた方が多いようで、なかには徳島県から昨日の松之亟さんの独演会に引き続いてわざわざ来られた女性もいてびっくり。
前座は笑福亭茶光さん。「手紙無筆」というネタです。字を読めないのに、友だちに「手紙を見てくれ」と言われて知ったかぶりをするからさあたいへん。結局一行も読めずに言い逃れをします。軽妙な受け答えに思わずわははと笑いましたが、あの手紙には何が書いてあったのだろう。大事なことだったら困るのに、と余計な心配をする私…。
講談の神田松之丞さん。私は全然知らなかった(すみません…)のですが、いま巷ではチケット完売の若手講談師だそうで、なるほど、こんな知名度のない地域寄席に若い女性がいつになく来ているわけだ。「雷電の初土俵」という、かの有名な相撲取り、雷電為衛門の土俵の様子を語るのですが、釈台を素手でバンバン叩いて、うわーっと盛り上がるその高揚感!ほんとに土俵際にいるみたいで、いや力が入った、はいった。「講談てのはおもしろいもんだなあ」と、常連さんが帰りにつぶやいていました。
二つ目の昔昔亭桃之助さんは、もうすぐ真打に昇進できるベテランさんです。松之丞さんの興奮冷めやらないなかで、落ち着いて新しい世界を作ります。「浮世床」というネタは、髪をあたってもらうだけでなくみんなでおしゃべりする社交場みたいになっている床屋で、いろんなことが起こる日常を描写した小話をつなげていくものだそうです。将棋をしてる面白い人、看板の絵の評価でけんかする人、お芝居で妙齢の女性と知り合いになり、いい仲になったんだと得意になってしゃべる人。それぞれ落ちは、あらら。
とりは桂小南治師匠。つつみ寄席にはもう5回も来ていただいています。私と同じ年なんだって。「鰻の幇間」は、たいこもちが道でばったり会った人に鰻をたかるのですが、だまされて反対に勘定をまわされてしまう。あげくに草履もはいていかれてしまうのです。でもあんまりかわいそうじゃなくて、働かないで食べようっていう了見がいけねえ、って思ってしまいます。小南治師匠の、部屋が汚くて、お膳にほこりがつもってて、おちょこが葬儀屋ので、なんていう描写がすごくリアルで、だまされた幇間のくやしさをいっそうかきたててます。
最後に抽選会があります。今日来てくれた芸人さんに色紙を書いていただくのです。真打ともなるとさすがに、すごい!
今回も前座の前座でつつみ寄席の宣伝をさせていただきました。この次も是非来て、会を支えてくださいとお願いしました。徳島から来た女性はつくづく「身近にこういう寄席があるなんていいですねえ」と言っておられました。徳島には落語家さんはほとんど来ない。来ても会場がいっぱいにならず余計に来ない。不毛の地だと。松之丞さんの東京の独演会のチケットをとり、翌日もここまで追っかけてきて、打ち上げでさらにお話ができて、「うれしかった」と帰って行かれました。地域でこうして続けていくことが大事なんだなあとその方を見ていてつくづく思いました。
次回は12月でーす。