市議団が災害問題の研究委託。報告書が完成し報告会を行いました
昨年10月の台風19号で川崎市内もたいへんな被害が出ました。8カ所3千軒以上が床上浸水などになり、2万人が避難所に避難しました。8カ所の浸水の大元の原因は多摩川の増水ですが、被害の直接の原因はそれぞれ異なり、市も一定の対策は行なっています。しかしそれでいいのか専門家の検証が必要だと、日本共産党川崎市議団が研究委託を行い、11月15日、その研究結果の報告会がありました。
委託したのは、防災研究家の中村八郎さんです。半年以上かけて、現地も繰り返し見ていただき、詳細な研究報告書ができました。また、問題意識として、避難所のあり方もあれでよかったのか、コロナ対応という新しい課題にどう向かうのか、も考えていただきました。
冊子はどなたにもお届けできます。前半は被災箇所の個別具体の考察なのですが、そこから導き出される総合的な国や自治体の災害対策のあり方は、なるほど!と思うことばかり。報告会では最後に冊子にはない、多摩川の総合治水に関する話もあり、参考になりました。
中村さんは被害の全容と市の対応をみて最初に感じたこととして「市はなんでもできないのだから、まずは自分でなんとかしなさい」という前提がありありと出ている、と言いました。まさに「自助・共助」です。「災害による被害は社会的に発生するもの。個人の力ではふせぐことができない。公が何をするのかが問われており、川崎市には緊張感が足りない」とまず指摘されました。
排水樋管から多摩川の水が逆流した問題についても、平瀬川や三沢川など多摩川の支流から住宅街に浸水があった問題についても、それぞれ詳細な検討がされ、独自に市の対応に問題があることは指摘されましたが、総じて重要なのは、なんでも排水樋管や支流に雨水を流し込み、最終的に多摩川に全部押し付けるやり方でこれから対応できるのか、ということでした。多摩川の水位が上がってそれぞれの支流や樋管の水門を閉じれば、いくらポンプ車を出しても内陸で降った雨の排除は追いつかず、当然内水氾濫が起きる。そのやり方だけに頼っていいのかという問題意識です。これは、わたしもずっと引っかかっていたので、やっぱり、と思いました。後の報告にもなるのですが、やはり川は総合的に見ないといけない。治水はまさに治世なのだと思いました。
避難所の分析も明快でした。「川崎市はどの文書を見ても『避難所には来ないでください』と言わんばかりのことが書いている。これはどう考えてもおかしい」と、繰り返し強調されるのです。避難所の設置は法律で定められた行政の責任。来るななんて言うか!ということです。避難したい人は誰でも受け入れる。そのために必要なことは何か、と考えなければ、実際に必要なことがわからない。その通りです。
最後に多摩川の総合的な治水について考察されました。初めて見たのは、東京都の水道網です。人は使用する水道水の8割から9割は下水に流しています。飲み込んでしまう水はほんのわずかなんですね。だから下水の使用量は水道の使用量に準じているのです。東京都民の水道の原水は利根川も大量に使っているのですが、利用している人口は多摩川周辺が5割あり、その下水は処理されて多摩川に流れ込む。多摩川の負担はものすごく大きいと指摘されるのです。川崎市はその多摩川の最下流のほんのわずかしか接していないのに、その被害のほとんどを引き受けざるを得ない。これは川崎市ひとりで解決できるものではありません。また、多摩川流域の6割は森林。ここの保水力も課題です。あぁ、私たちはどこまでできるのか。何をすれば、わたしの周りの人たちを救えるのか。
たくさんのことを考えさせられ、まとまりもつきませんが、足元から一歩ずつ、です。12月議会も始まります。この報告書に基づいて、できるところから始めようと思います。