岩手県宮古市・遠野市を視察しました その2
その2は、遠野市です。4年くらい前に、観光できたことがあったなあ。
視察したかったのは、市立の助産院です。川崎市もお産をするところがないという問題が深刻で、正常な分娩は助産院でできることから、今すぐ対応する方法として、市が助産院をもっと作ったらどうかという提案をしてきました。公立病院の院内助産院という方法もあり、ここのように、独立した助産院という方法もあるとのことで、視察に来たのです。
名前は「ねっと ゆりかご」。聞いてみてわかったのですが、ここでは分娩はしないとのことでした。でもなくてはならない施設だということがよくわかりました。遠野市では8年前から出産できる病院がなくなってしまいました。年間200人は赤ちゃんが生まれるのですが、全員が車で最低1時間半はかかる市外の病院にいかなければなりません。毎月の検診は、一人で車を運転して。生まれそうになったらだんなさんが仕事を休んで、1時間半以上の道のりを走らなければならない。冬の峠道はアイスバーンどころではなくミラーバーンになるというのです。アンケートをとると「もう二人目は産みたくない」という人が多いというのも、無理からぬなあと思います。
そこで、せめて検診は市内でできるように、そして、緊急事態があったときや産まれそうなときに、医師が的確に診断して判断が下せるように、助産師を常駐させて、おなかの張りや赤ちゃんの心音を自動で検知して遠くの病院の先生に送ることができる装置を設置したのです。検診も半分は病院でないとできないのですが、あとはこの「ねっと ゆりかご」で受けられます。ちょっとへんだなあ、と思ったらここに来て、助産師に見てもらい、必要ならすぐその場で、遠くのかかりつけの病院の先生に連絡を取ることができるようになっています。そして「すぐ来て」とか、「救急車で搬送して」と言われることもしばしばあるそうです。
本当は分娩もできればいいのだけれど、緊急のときに医師がどんなに近くても1時間半もかかるところにしかいないのでは、なにかあっても責任が取れない。とても市としては決断できない、と担当課長さんは言っておられました。国の政策で医師の養成を怠ったことが、本当にたくさんのところで深刻な事態を招いていると思いました。
でも助産師さんたちはこの助産院がとてもいいといいます。「病院で勤務していたときは、妊婦さんと日常的に接することはまったくなかった。いまは、毎月顔をあわせるだけでなく、スーパーでもばったり会って、会話することができ、その人の生活スタイルに合った指導ができる」というのです。なるほど、私も経験があります。大きな病院で検診を受けていると、2時間、3時間待って、5分くらい必要な検診を受けておしまい。聞きたいことがあってもほかにたくさんの人が待っている。産まれてからも、だれにも相談できない。いっぱい不安がありました。でもここなら、いつでも相談できるのです。川崎の助産院でも感じた雰囲気でした。
各自治体でいろんな工夫をしています。市民が困っていること、望んでいることにこたえようとしている姿に、川崎でもそういう姿勢を持たせたいものだと思って、すこ~し涼しい岩手から、暑い川崎に帰ってきました。