高知県梼原町を視察しました
高知県梼原(ゆすはら)町。高知県と愛媛県の県境の町です。人口3800人ちょっと。4割が高齢者。町の面積の90%が森林。ここが、住民が主体となってまちづくりをし、そのなかで町で使うエネルギーは町で作ろう、と取り組んでいます。いやはや、とても素敵な町でした。
高知県庁で、災害対策についてたくさんの施策を教えていただいたあと、高知駅から須崎という駅まで鈍行で1時間(待ち合わせが多いと1時間半かかる)、須崎からバスで50分。10人で視察に行きました。須崎でバスに乗ったら、運転手さんが「わっ、こんなにお客さんがいる」と驚き、山の中を延々と走り、終点で降りると…。急にきれいな町並みが広がりました。広い道路に統一感のある家が並びます。電線が地中化されているので、空が広い。夕方明かりがともると、幻想的でさえあります。人はほとんど見かけないのですが、なにか、生き生きとした感じを受けます。過疎の町に感じがちな、沈んだ雰囲気がないのです。
1泊して翌日、町役場でまちづくりと自然エネルギーの活用についてうかがいました。まず、木造の町役場に感動!です。町を活性化させるには、町にあるものを生かしていくしかない、環境と共生しながらまちおこしを、ということで、荒れ果てようとしている町内の山から木を切り出し、公共施設はこれをすべて使おうというわけで、役場を木造にしました。役場の中はそれはきれいでした。木を使うというのは徹底していて、町の職員のネームプレートも、駐車場の車止めも木材。銀行のATMのプレハブも、中学校の部室も木造でした。
公共施設に太陽光発電をつけるのはもちろんのこと、個人住宅へは国の支援とあわせると100万円も出します。すでに全世帯の6%、17軒に1軒が設置しているとのこと。川のちょっとした段差を利用して小水力発電も行い、学校の電気とあのメイン道路の街灯に使っています。地熱を利用して温水プールをつくり、間伐材を使ったペレット製造工場を第3セクターで作りました。
さらにすごいのは、風力発電所です。四国カルストのてっぺん、四国で一番高いところに2基の風力発電施設を設置しています。そこまで見に行くことができました。標高1200メートル。設置費が4億2000万。270万キロワットの発電ができ、年間3500万円は売電しているそうです。この利益は太陽光発電の補助金として使っています。
年間の税収が3億円のこんな小さな町で、次々とあれも作りこれも造り、大丈夫なのかと思いますが、そこは国の補助金をうまく利用し、交付金をしっかりもらってきているようで、川崎のようなある程度財政力のある大都市とは国のお金の流れ方が違いますが、それにしても、ものすごく意欲的に町が動いているという感じがします。そのもとが、住民の自治意識にあると言われました。
もともと坂本竜馬が脱藩して土佐を離れるとき、この町から峠を越えていきましたが、それに協力し、日本の歴史を動かしたことをとても誇りに思っている人たちで、今の竜馬ブームで資料館も作り、立派な銅像もある土地柄です(それはここに来て、資料館を見て始めて知りましたが)。10年ほど前、愛媛に抜ける国道を拡張するとき、どこを通すのか、町をどうするのかを「会」をつくって話し合い、町のメイン道路を拡幅して、町並みを統一しようと決めたのはその会の人たちだったというのです。町はその思いをうけとめて、統一した町並みにふさわしい家を建てる人には補助金を出します。その道路を作るために50軒が立ち退きになりましたが、別の町に行ってしまったのはたった4軒。みんなこの町に残り、新しいまちづくりに協力しています。公園は子どもたちの設計だそうです。こうしたまちづくりへの思いが、いろいろたいへんだけれど、やってみようという思いにつながっていると感じました。
こうした雰囲気は、長野県の木曽町でも感じたことです。町の人たちが自分の住んでいるところにほんとに誇りを持って、だれでも自慢をしてくれるのです。ふりかえって、わが川崎はどうか。人口が多ければそういうことは無理なのか。本当に考えさせられる視察でした。